長居植物園には、ボタン園、バラ園、シャクヤク園、シャクナゲ園、ツバキ園、マグノリア園、ジャーマンアイリス園、アジサイ園、ヘメロカリス園、ハナショウブ園、ハーブ園の11の専門園があります。
ボタン園約2900m2|約80品種|約1300株|花の見頃 4月中旬
ボタン園は、2022年にバラ園の北側に移設され、新しく生まれ変わりました。ボタン園のボタンは、観賞しやすいように、目線の高さに近いように高さを調整していますが、新しいボタン園では、自然のままに大きく育てるボタンを数本設定しています。
ボタンは、ボタン科ボタン属の中国原産の花木で、本来は薬用植物ですが、この花のもつ美しさ、豪華さなどから観賞用として改良され、すでに8世紀の唐の時代には園芸植物として栽培されていた世界で最も古くから改良された花のひとつです。
日本へは、奈良時代に薬用植物として渡来し、やがて観葉植物として奈良の諸寺に植えられたといわれており、南北朝時代には新品種も作られ、江戸時代には冬に咲く寒ボタンをはじめ、様々な色の品種が作り出されていました。薬用植物としてのボタンは、根皮を乾燥させたものを使います。
ボタン園のボタンの花の見頃は、4月中旬です。また、ボタン園にはサンシュユの木がたくさん植栽されていて、2月中旬~3月中旬頃に樹冠いっぱいに咲かせる小さな黄色い花も見どころのひとつです。
バラ園約7000m2|約240品種|約3500株|花の見頃 5月中旬~6月中旬、10月中旬~11月中旬
バラは、ランと共に世界中で最も親しまれている植物です。バラの野生種は、ほぼ北半球の全域に分布していて、日本にも10数種類の野生種があります。現在、私たちが観賞しているものは、そのほとんどが人為的に作出された園芸品種です。栽培の歴史は古く6千年前からと言われており、現在も世界各地で新しい品種が作出され、品種の数は1万をはるかに超えています。
長居植物園のバラ園では、「世界バラ会議」で選ばれた殿堂入りのバラがすべて揃っています。また、2019年にバラの回廊が新設され、バラと共にクレマチスも植栽して立体的に花を楽しんでいただける景観が生まれ、さらに2022年には、新しい品種や宿根草との寄せ植えによる新しい魅力が追加されました。春バラは5月中旬~6月中旬、秋バラは、10月中旬~11月中旬が見頃です。
シャクヤク園約1100m2|約30品種|約1600株|花の見頃 4月下旬
私たちがシャクヤクと呼んでいるものは、ボタン科ボタン属の植物で、中国北部から朝鮮半島北部に分布する耐寒性の強い宿根草を品種改良したものです。
日本には15世紀頃、中国から薬草として渡来し、その花の美しさから江戸時代には観賞用として各地で園芸品種が育成されました。中国からヨーロッパに渡り品種改良されたものは、洋種シャクヤクと呼ばれて、日本でも栽培されています。シャクヤクの花は、4月下旬頃が見頃です。
シャクヤク園に植栽している高木は、中国北部原産のシダレエンジュです。中国では縁起のよい木とされています。夏には枝の先に白い花をいっぱい咲かせ、冬には枝垂れた枝がねじれるユニークな姿がみられ、シャクヤクの花のない時期も楽しめます。
シャクナゲ園約1400m2|約30品種|約800株|花の見頃 4月
シャクナゲは、ツツジ科ツツジ属シャクナゲ節の植物で、約140種あり、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど北半球全域に広く分布しています。原種は標高の高い山に自生しています。赤、ピンク、白、黄色、赤紫など、花色が豊富で、ゴージャスな花を咲かせます。シャクナゲ園の東半分はツツジ山になっています。ツツジもシャクナゲと同じツツジ科ツツジ属の仲間です。日本では、シャクナゲよりもツツジの方が、種類が多く、非常に多くの種類が自生しています。
シャクナゲ園はソメイヨシノ等のサクラ類も多く、お花見の場所としても人気があります。
シャクナゲは、4月初旬~下旬、ツツジ類は5月上旬が見頃となります。
ツバキ園約13200m2|約80品種|約1200本|花の見頃 11月中旬~4月中旬
ツバキ園は、関西の現代の森の様子を表した照葉樹林の中にツバキのエリアが点在する形になっています。
11月中旬頃から日本の固有種であるサザンカの花が咲き始め、ツバキ園の中の北側の園路沿いにはサザンカロードがお目見えします。花の少ない時期、鮮やかなピンク色の花は冷たい空気の中に映えています。
2月頃からは、様々な色や形のツバキの花が咲き始めます。
関西で路地に咲くのが珍しいキンカチャの花は、3月中旬~下旬にかけて花をつけます。様々なツバキの花が競演するのは4月の上旬~中旬頃になります。
長居植物園のツバキ園のツバキは、主に、東南アジア原産の種類のものを植栽していますが、一部、バラ園に隣接するところには、洋種のツバキを植栽しています。
ツバキは万葉の時代から観賞用として栽培され、元禄時代には江戸、肥後つばきといった特色のある系統のものが作られました。戦後は海外のつばきブームの影響で、ツバキの存在が見直され、海外の品種も多数導入され、国内でも新しい品種の作出が進みました。
今では、ツバキの品種は世界で7000品種以上と言われ、花の品種改良をやりつくしたというところがあり、キンギョツバキのように葉の形の改良にまで進んでいます。
大池沿いの園路近くにキンギョツバキのも植栽されているので、珍しい葉っぱの形を見ることができます。
マグノリア園約1800m2|8種|約80本|花の見頃 3月下旬~4月中旬、5月下旬~7月上旬
マグノリア園は、モクレン科マグノリア属(モクレン属)の植物を集めた園です。モクレン科マグノリア属は約90種あり、主にアジア大陸に、一部アメリカ大陸に分布しています。春に大型の花を咲かせるものが多く、日本原産のものとしては、春を告げる花としてよく知られているコブシが代表的なものであり、他にシデコブシ、ホオノキ、オオヤマレンゲなどがある。中国原産のものとしては、早春に大型の香りのある花を咲かせるハクモクレン、シモクレンが、北アメリカ原産のものとしては、常緑高木で夏に大型の花を咲かせるタイサンボクなどがある。
マグノリア園では、3月下旬~4月中旬にコブシやモクレンなどが、5月下旬~7月上旬にタイサンボクなどの花が楽しめます。
ジャーマンアイリス園約200m2|約30品種|約1600株|花の見頃 5月初旬~中旬
ジャーマンアイリスは、アヤメ科アイリス属の宿根草で、5月初旬から中旬が見頃となります。日本のハナショウブやアヤメ、カキツバタと同じ仲間で、アイリス属のいくつかの品種が交雑しあったものを欧米で愛好家が改良して作り出した園芸品種で、現在栽培されているほとんどが、アメリカで作出されたものになります。
当植物園のジャーマンアイリス園の開設は昭和58年。
古代ギリシャ神話の時代から、永遠の生命のシンボルとして愛され続けてきた伝説の花だと言われています。多彩な色彩や独特の色合いが人気で「虹の花」ともよばれ、5月上旬から中旬が見頃となります。
ハナショウブと花や葉の形がよく似ていますが、ハナショウブが湿地帯に生えるのに対して、ジャーマンアイリスは、乾燥や暑さ、寒さに強く、湿気を嫌います。肥料もほとんど与える必要がない強い植物です。
アジサイ園約5600m2|約45品種|約10000株|花の見頃 6月
アジサイは、東アジアと南北アメリカに自生するユキノシタ科アジサイ属の植物で、世界に40数種、日本に10数種類が自生しています。
アジサイ園にも多く植栽されている西洋アジサイは、日本のアジサイがヨーロッパで品種改良されたものです。シーボルトがアジサイを持ち帰り、品種改良などに努めたことや、幻のアジサイと呼ばれた六甲山系に自生するシチダンカを発見したことは有名な話です。
長居植物園は全体に、平坦な地形ですが、アジサイ園は大池と小池をつなぐ渓流が流れる谷にあり、立体的に花を楽しめ、花の時期にはたくさんの人が訪れるフォトスポットにもなっています。
アジサイの花の盛りは6月頃。華やかな「隅田の花火」や「ダンスパーティ」、かわいらしい「ウズアジサイ」などは、毎年人気があります。
ヘメロカリス園約2000m2|約80品種|約1300株|花の見頃 5月下旬~7月中旬
ヘメロカリスは、ススキノキ科ヘメロカリス属の宿根草で、アジア東部の暖帯から温帯に10種ほど野生しており、日本に自生するヤブカンゾウ、ユウスゲ、ニッコウキスゲと同じ仲間です。
ヘメロカリス園では、現在、日本で手に入る原種をすべて揃え、その他、華やかな園芸品種も楽しんでいただけるようになっています。花の見頃は、5月下旬~7月中旬頃です。
丸形に切り取った植栽帯に1品種ずつ植えているのは、ヘメロカリスが交配しやすい植物のためで、品種不明のものが出てしまわないようにしています。
英名Day lily(ディリリー)は、1日花であることを示しています。5月下旬~7月にかけて、毎日新しい花を咲かせ、楽しませてくれます。
ヘメロカリス園には、大木になったケヤキやエノキ、ヤシなどが植栽されていて、絵になる風景をスケッチに訪れる方もたくさんおられます。
ハナショウブ園約450m2|約40品種|約900株|花の見頃 5月下旬~6月初旬
ハナショウブは、アヤメ科アヤメ属の伝統園芸植物で、北海道から九州にかけて自生するノハナショウブから改良されたものです。江戸時代後期から園芸化がすすめられ、育成地ごとに江戸系、肥後系、伊勢系と各々独特な品種が育成されており、ハナショウブ園では、この3系統と、それより古い時代栽培された古種系(長井系)の花を楽しむことができます。
端午の節句にはいる菖蒲湯のショウブはハナショウブとは別物で、サトイモ科の植物です。葉の形が似ていたので、ハナショウブと名付けられました。
ハナショウブ園には、ハナショウブとよく似たアヤメやカキツバタ、キショウブも植栽しています。カキツバタやショウブ、キショウブは水生植物ですが、アヤメは陸生です。ハナショウブは水辺に生えますが、一年中、水につかっているのは良くありません。
ハナショウブ園の大池沿いには、水生植物の展示エリアがあります。絶滅危惧植物のガガブタやコウホネも植栽されています。
ハナショウブ園の見頃は5月下旬~6月初旬です。水辺に最も近づくことができ、目前に広がる水景をゆったりと楽しめるエリアです。
ハーブ園約2200m2|約80品種|約4000株|花の見頃 5月
ハーブというと、香りのよい草本類をイメージされる方が多いと思います。ハーブの定義はあいまいですが、その植物のもつ成分が食用、薬用、香味等に利用される植物で、人に対して、何等かのよい効果が期待できるものと言えるでしょう。
ハーブと呼ぶものはシソ科やキク科に多くみられます。日本のショウガやミツバ、オオバ、お茶やベニバナなどもハーブの一員です。
ハーブ園では、生活の中で楽しめるものを植栽していますが、品種が混ざらないように鉢に植えたもの、色々なハーブを群植したものの2種類の展示が見られます。
ハーブの香りは花よりも葉で楽しむものが多いため、1年中楽しめますが、花が最も美しいのは、5月頃です。
ハーブ園のまわりには、キッチンガーデンや果樹園もあり、普段みられない野菜や果樹の姿を楽しむこともできます。