春や秋の気候のいい時期には、植物も美しく、多くの方が長居植物園に訪れられます。
長居植物園では、バラやアジサイ、ヒマワリやコスモス等、大変人気のある植物もありますが、それ以外にも、興味のわく植物や風景がたくさんあります。
お目当ての植物を見に来られるには、HPの開花情報やSNSでの発信をご覧になるのが一番確実ですが、ここでは、長居植物園の四季の移り変わりをご紹介します。多種多様な植物園の姿をお楽しみいただければ幸いです。
写真:デイゴ
冬には冬の楽しみを。冷たい空気の中咲く花や、異形の樹木を楽しむ。
長居植物園のメインエントランスを入ると、ラクウショウの並木が皆さまをお出迎えします。冬は葉を落とした円錐形の美しい樹形が立ち並び、足元を見ると、赤茶色の細かい落葉の間から「気根」が出ているのに、気づかれる方もおられるでしょう。気根は根が地上に飛び出して呼吸をするもので、大阪市内で見られるのは珍しいです。
歴史の森の小池まわりのラクウショウの気根はもっとたくさん出ていて、ユニークな景観を呈しています。
12月や1月の冬の植物園では、種類は少ないとはいえ、サザンカやニホンズイセン、ロウバイ、ヒマラヤザクラなどの花が咲いています。
この時期は、どちらかと言えば、花を楽しむというより、葉っぱが落ちた樹の形や、冷たい空気の中で膨らもうとする蕾を見つけるという、少しばかりマニアックな楽しみ方になるかもしれません。
なかでも、枝がグルグルねじれている様がシュールなシダレエンジュや、ゴツゴツとした樹形のデイゴは、葉や花をつけている時期には想像もつかない姿で、葉を落とした時期ならではの光景です。
写真:サンシュユ
花が咲き始める2月頃から春への期待感を膨らませるのもおすすめ。
1月の終わり頃から、いい香りが漂うウメの花が咲き始めます。2月には様々な品種のウメが咲き揃い、寒い中でもカメラを片手に植物園を訪れる方も多くなります。
マンサクやサンシュユの花が咲き始め、クリスマスローズの花数も多くなってきます。カワヅザクラの芽も大きくなり、春への期待感が膨らんでくる時期でもあります。
3月になると、園内のあちらこちらで少しずつ春めいてくるのを感じることができます。時折の寒のもどりが、春の足音をより鮮明に響かせることでしょう。
3月末頃にはアーモンドやサクラ、シャクナゲの花も咲き始めます。珍しい黄色のツバキ、キンカチャの花もこの頃に見ることができます。
ソメイヨシノの花が咲き始めると、いよいよ春本番。さらにスピードを増して、景色が色づいてきます。
毎週来られても、植物が成長している姿を感じとることができると思います。
写真:ソメイヨシノ
4月から6月にかけては、さまざまな花が咲き乱れて、見どころ満載!
3月末頃から4月の初めはソメイヨシノが満開で、花びらとともに走り回る子どもたちの声が、楽しげに響き渡ります。ツバキ園のツバキも満開です。様々な色や形のツバキを見ながら、照葉樹の森を散策すると、蜜を吸いにきた小鳥たちに会うこともできそうです。
4月にはライフガーデンが花畑になり、映える写真を撮影できるスポットになります。最近はネモフィラを植えて、真っ青な花の世界を作り出しています。
ソメイヨシノが散ったあとは、シャクナゲやボタンが花盛りになり、次いで、シャクヤクの花が咲きだします。ボタンは、シャクヤクを台木にするので、両者はとても関係の深い植物なのです。ちなみに、ボタンは木で、シャクヤクは草です。木が草を台木にするなんて、なんだか不思議ですね。
5月後半にはバラ園も華やかになってきます。春と秋に咲くとはいえ、やはり、春のバラは圧巻です。長居植物園のバラ園ではクレマチスも楽しめますよ。
バラ園まわりのジャーマンアイリスも、この頃一緒に咲いてきます。
ハーブ園もこの頃からが盛り。ラベンダーやセージなど、さまざまなハーブが花を咲かせています。少し葉っぱに触って香りを楽しむのも一興です。
この時期には、歴史の森あたりの新緑も美しく、ラクウショウに囲まれた小池周辺は、明るく心地よい空気に包まれています。ラクウショウとよく似た樹木のメタセコイアの林も小池の近くにあります。メタセコイアは、絶滅したと思われていましたが、中国四川省で生きているのが発見され、アメリカを経由して日本に広がりました。まさに「生きた化石」です。小池のまわりにあるハンカチノキも、植物界のジャイアントパンダと呼ばれるほど珍しい木で、5月頃に花を咲かせます。
6月になると、アジサイが最盛期を迎えます。山奥の谷をイメージした園は、本当に大阪市内か?と思わせる雰囲気が漂います。
この時期には、ヘメロカリスも満開に。樹冠いっぱいに紫の花を咲かせるジャカランダと真っ赤な花を咲かせるデイゴのあるエリアでは花のコントラストが美しくなり、地面に落ちた花の絨毯も趣があります。さらにはハナショウブも見頃を迎えるという贅沢な時期となります。
大池のスイレンも来るたびに範囲を広げているかもしれません。
ダリアは6月後半にかけて、最盛期を迎えます。
写真:スイレン
ちょっと一休み。7月の植物園。自分だけのゆったりした空間を楽しむチャンス。
7月は花が一休みする季節です。
神秘的に咲くスイレンのそばで、水生植物のコウホネやガガブタの花が、ひっそりと咲いているのを見つけられるでしょうか。これらは、絶滅危惧植物なのですよ。
この時期は、ムクゲやフヨウの咲き始めに出会えるかもしれません。カンレンボクが小さな実をつけはじめ、オリーブの実、ヤシの実なども見ることができるのもこの時期です。6月の先を争うように花が咲き乱れる時期に比べると静かな景色となりますが、そのぶん、小さな花や面白い葉を見つける機会にしてはいかがでしょうか。
この時期、ゆったりと緑の中で休むのにはいい季節です。
写真:ヒマワリ
存在感バツグンのヒマワリ畑は夏の暑さの中でも大人気
7月後半になると、ライフガーデンのヒマワリが咲き始めます。100日咲くというサルスベリもピンクの花が目立ってきます。
渓流沿いのノリウツギは白く爽やかな景観を作り出し、美しい水景を楽しむことができます。
8月のヒマワリの最盛期には、暑くて外に出るのがためらわれるような日でも、ヒマワリを観るために多くの方が来園されます。すぐ近くのシャクヤク園では、シダレエンジュの白い花が満開になっています。この樹が葉を全部落としたら、幹も枝もぐるんぐるんにねじれていることを、この時は想像することが難しいですね。
サルスベリは、ずっと隣の木と枝がぶつからないように剪定していましたが、2021年の整備工事で、木と木の間を広げて、自然な樹形となるように移植されました。
足元には、背が低い矮性のサルスベリも植えられたので、上から下までピンクの世界に浸りこめることでしょう。
ヒマワリの華々しさから少し目をそらしてみれば、秋にたわわに実をむすぶカリンや、色づく前の若々しい緑色の実をつけたカキが目に入ってきます。次の季節を先取りするように、こんな植物に目を向け、想像力を働かせるのも脳の活性化には役に立ちそうです。
写真:ヒガンバナ
いろんな実が目立ちはじめる。赤や白のヒガンバナの季節。
まだ残暑が厳しい9月に咲いているのは、サルスベリや、フヨウ、ムクゲなどのハイビスカスと同じ仲間たち。フヨウやムクゲは、8月から10月までの間で咲いたり、休んだりを繰り返します。
いつも決まったようにお彼岸に咲くヒガンバナ。長居植物園では、赤と白のヒガンバナが見られます。
この頃は、いろんな樹々の実も大きくなり、目立ってきます。普段は目立たないチシャノキが小さなオレンジ色の実を実らせているのを見て、木の名前を知りたいと思う人も多いかもしれません。
9月頃になると、秋の七草のひとつ、ハギが咲き始めます。花のように見えるユニークな形の実がなるカンレンボクも実をたくさん実らせ見事な姿を見せはじめます。
写真:パンパスグラス
バラやダリアが秋を彩る季節。パンパスグラスの白い穂が秋空に映える。
10月の中旬頃からは秋バラやダリアが見頃を迎えます。
春ほどの華やかさはありませんが、秋バラは花色に少し深みが出るように感じます。
この季節、高くて青い空に映えるパンパスグラスは人気があります。2022年度に新しくお目見えするミューレンペルギア カピラリスの赤い穂が風に揺れる姿も、負けずに人気ものになってくれるでしょう。
大株になったサキシマフヨウは花数が多くて見事な姿を見せてくれますし、運がよければ、ユーカリの花を見ることができるかもしれません。
ユーカリと言えば、長居植物園のユーカリは30mを超える大木になっていて、広場をとりまくように植わっているので、風で葉擦れをしたときなどは、季節を問わず、清涼感のある香りをかぐことができます。
目立ちはしませんが、宝石を量る単位に使われたイナゴマメの花が見られるのもこの時期です。
写真:小池
ライフガーデンのコスモスは華やかに。落葉樹たちの紅葉もはじまる。
ライフガーデンのコスモスが最盛期を迎える11月。ナンキンハゼ、ラクウショウ、イロハモミジ、エノキ、ケヤキ、ムクノキ、カキノキ、ニシキギ、ハナノキ、フウなどが葉を赤や黄色に染めています。
寒暖差の大きい地方に比べると、葉の色の鮮やかさは劣るかもしれませんが、大きく育った樹々の紅葉する姿は美しく、特に歴史の森の小池のまわりの景色は大阪市内とは思えない秋の風景が見られ、すっかり葉を落とした針葉樹林の景色にもカメラを向けたくなります。
植物園には色んな種類のドングリの木があるので、形を見比べながら落ちた実を探すのも楽しみのひとつです。
写真:サザンカ
ツバキ園でサザンカの花が華やかに咲き誇る。
落葉樹が葉を落とし、紅葉も見られなくなる12月頃には、ぜひツバキ園を訪れてみてください。常緑樹の中に鮮やかなピンク色の花を咲かせるサザンカの道が現れます。歴史の森で冬枯れの森を見るのも一興です。
11月頃から葉を展開しはじめたニホンズイセンや冬咲クレマチスも花を咲かせはじめます。
チャイニーズホーリーの赤い実や、アメリカフウの個性的な丸くてトゲトゲした実、ナンキンハゼの白い種も目立つ時期です。
植物園通の人たちは、春に咲く花の芽がたくさん膨らんでいるのを見て、満開の姿を思い描きながら、冬の景色を楽しまれているようです。
つぼみが形成され、花が咲き、実がなる。花や葉、そして実が地面に落ちて、やがてそれが養分になる。ひとつひとつの植物が、季節が進むごとにいろんな姿を見せてくれます。植物園では、大阪市内という都会にあっても、できるだけ自然に近い姿を見てもらえるように、植物たちを育てています。
花の美しい季節には、ぜひ、その華麗で可憐な姿を見に、また、それ以外でも植物のさまざまな姿を楽しみに、緑の中で心を癒しに、長居植物園へお越しください。
また、植物園では植物講座など植物についてより深い知識を持っていただくセミナーを行っています。
ボランティアになって、実際に植物に触れ、育てるお仕事もありますので、どうぞ、いろんな形で長居植物園をお楽しみください。