2024年4月27日 おかげさまで50周年!

再オープンした長居植物園について

未来への種まきできました。

~未来を担う子どもたちの記憶に残る植物園へ~

2024年4月に開園50年を迎える長居植物園は、 粘土質の土壌は根を元気に張ることが難しく、
混みあった樹間はのびのび成長できず、
公園内の雨水が流れ込む大池は年々水質が悪化し… と、植物たちにとって、
つらい状況となっていました。

そこで私たちは、2021年11月1日から約5ヶ月間、
休園させていただき、 植物たちが笑顔になるような
成育環境をつくるために、
植物園の魅力を向上させる
様々な工事を行ってきました。

2022年3月31日に、植物たちが生き生きと成育していくための、
「種まき」が終わり、 新たに成長していく準備ができました。

子どもたちの知的好奇心が高揚したり、 美しい景色や自然に心が躍ったり、
癒されたりした記憶に触発され、
いくつになっても、
また、長居植物園に行きたくなる。

そんな場所になることを目ざし、 これからも、私たちは、未来に向けて、
いろんな種をまいていきます。

植物たちの成長とともに、
みなさまの心にも花が咲きますように。

2022年4月1日

ラクウショウ並木

ラクウショウ並木にまいた

~入口空間を緑豊かなラクウショウのゲートに~

メインエントランスのラクウショウ並木は、この場所に植栽してから約30年の月日を生き、大きく根を張り巡らせたため、舗装は持ち上がり、土はかたくなり、草本類が生えていたラクウショウの足元は裸地になっていました。

根は、近くを通る排水管にまで侵入、雨が降ると、舗装に水がたまっていました。

一方、このラクウショウの根は、「気根(きこん)」として地上に顔を出し、呼吸をするために、とても重要な役割を果たしています。この気根は、大阪市内ではあまり見ることがなく、この珍しい姿に興味を惹かれる方も多いのではないでしょうか。

  • ラクウショウ
  • ラクウショウ

「ラクウショウの生育環境を改善して、ラクウショウの足元にも緑を復活させたい。」

大事な根は残しながら、舗装に張り出した根を切り、ガタガタになっていた舗装を直しました。
根を痛めたものは、混みすぎている枝を落とすことで上部を軽くし、根に栄養を届けられるようにしました。
カチカチになっていた土は、柔らかくするため根と根の間に空気を送り込み、肥料を入れました。
柔らかくなった土には草本類を植え、寂しかったラクウショウの足元に緑を復活させました。

これからは、ラクウショウや草本類の様子を見ながら、みどり豊かな空間をつくっていきます。

サルスベリ

サルスベリの広場にまいた

~のびのびと枝をのばせる花の広場に~

サルスベリは、真夏の暑い時期は鮮やかなピンク色の花を長期間咲かせ、冬は名前の由来となった滑らかな幹が映える、特徴的な樹形を見せてくれます。

サルスベリは横に広がりながら成長する木ですが、窮屈なこの場所では、ぶつかり合わないよう、毎年剪定して形を整えていました。

  • サルスベリ

「サルスベリをのびのびと育てて、サルスベリの名所をつくりたい。」

自然樹形に成長させるための間隔を十分取れるよう、サルスベリを移植、園路を挟んで両側にも配置しました。
根の成長を促すために、全てのサルスベリの周りの土を柔らかくして、肥料を施しました。
のびのびと育てるため、これまで行っていた剪定は行いません。

また、サルスベリの足元には、季節の花々を植えていきます。
春にはチューリップ、夏には低木のサルスベリ、秋にはリコリス、冬にはスイセンなど、その季節に咲く花で埋め尽くされます。

最初は小さな草花も、季節を重ねるごとに大きくなっていくでしょう。
季節を通して、姿を変えていくサルスベリの広場を楽しんでいただければと思います。

ツバキ園

ツバキ園にまいた

~歩きたくなるツバキ園への変身~

ツバキ園は照葉樹林の中にあり、大きくなった常緑樹の暗い森の中にありました。冬にはサザンカが鮮やかな花を、森の奥には珍しいキンカチャを咲かせますが、暗くて入りにくいといった来園者の方もおられました。

「ツバキの多様さを楽しんでもらえる、入りやすく明るい杜にしたい」

ツバキも、密植されている場所があり、間隔をあけて成長しやすい状態にする必要があったため、ツバキ園の大池側の園路沿いの一部を移植して、樹木同士の間隔を広げました。また、できるだけ同系統色の花を集めて、エリア毎に異なった風景を楽しんでもらえるようにしました。
さらに、関西では路地栽培が難しいと言われている黄色いツバキ“キンカチャ”を増やし、バラ園との境界付近には、洋種のツバキを60株程植栽しました。

自由にどこでも歩けるようになっていたツバキ園ですが、土系の舗装を施し、小径をつくりました。それによって、根の上を踏み固められることも少なくなるでしょう。
また、車椅子でも入りやすいような勾配となるように工夫しました。

ツバキ園はさらなる変化を計画しています。これまで足を踏み入れることができなかった来園者の方々にも、楽しんでいただける新しいエリアにしていきます。

バラ園

バラ園にまいた

~これまでになかった魅力を追加~

バラ園は、多くの来園者の方が訪れる人気のエリアですが、2019年にバラの回廊を新設し、さらに魅力が増しています。
しかし、バラに古い品種が多いことや、バラのポールの老朽化等の課題がありました。

「バラ園に新しい魅力を増やして、選ばれるバラ園にしたい。」

老朽化したバラのポールは危険度も高かったため撤去し、撤去後は新しい舗装を施して、テラスとしました。
テラスの背景となる植え桝には、バラウォールを設置して、バラに囲まれて撮影ができるようにしました。

バラ園のエントランスロードにあったバラ花壇や、先祖帰りして杉葉が多くなったカイヅカイブキの生垣は、新品種のバラと宿根草を合わせた花壇に生まれ変わり、これまで長居植物園のバラ園になかった景色をつくり出しました。
新植時には、バラや宿根草が良好に成育できるよう、もちろん、土も新しいものに入れ替えています。

ひとつひとつのバラや宿根草が美しく咲くように、丁寧に育てていきます。
バラの花が咲く季節、中之島公園や靭公園のバラ園もいいですが、「長居植物園のバラ園に行きたい」と思っていただけるようなバラ園を目ざします。

ボタン園

ボタン園にまいた

~新しいボタン園の設置~

ボタンは、シャクヤクを台木として苗木をつくる植物でシャクヤクとは切ってもきれない関係をもっています。そのため、植物園などではボタン園とシャクヤク園とは近くに配置されているところが多くありますが、長居植物園では、ボタン園とシャクヤク園は離れた位置にありました。

「ボタン園をシャクヤク園の近くに移設して、新しいボタン園をつくりたい」

シャクヤク園の通路を挟んで向かい、バラ園の隣に移設して、洋風の新しいボタン園として生まれ変わりました。

ボタンの根が十分に張れるように、土を盛り上げて植栽したため、ボタンに囲まれた小さな谷の間を歩いているかのように楽しめます。また、ボタンは色ごとに配植、品種ごとの微妙な色の違いや形の違いを、より感じられるようにしました。

新しいボタン園にもともとあった、サンシュユの林やジュウガツザクラは残し、旧のボタン園から大きなニシキギを移植して、ボタンの季節以外にも楽しみのある園にしました。
今後はサインも充実させ、作出された時代ごとの特徴の違いも楽しめるようにしていきます。

二次林

二次林(長居の里山)にまいた

~里山ひろばの設置~

二次林とは、原生林が伐採や自然災害などで破壊されたあとに自然に再生した森林のことで、「里山」を構成する要素の中心をなしています。

長い年月をかけて、植生が変化していきシイ、カシ等の極相林※に移行していきますが、二次林を保全する方法としては、落葉や枝等を利用して明るい林を維持する必要があり、これまでできるだけ手を入れてこなかった管理手法を変える必要がありました。

一方、植物園の二次林には鳥たちが生息する大切なエリアもあるため、これらを守っていかなければなりません。

  • ※極相林とは、その場所に合うように、遷移してきた植生が最終段階に至った林のこと。大阪では、常緑広葉樹林または照葉樹林となります。
  • ※常緑広葉樹とは、落葉せず、1年を通して緑の葉をつけている大きく広い葉をもつ木のことです。
  • ※照葉樹とは、常緑広葉樹の中でも、光沢のある分厚い葉をもつ木のことです。
  • 二次林

「二次林を『長居の里山』として維持管理して、生物多様性を保ちたい」

まず、二次林は人の背の高さ程度まで茂っていた笹を刈って、地面に陽が差すようにし、多様な草本類が生えるようにしました。また、中に入りやすいように、自然風の小径を整備しました。一方で鳥たちが安心して過ごせる場所を確保するため、笹を刈らない場所や人が入り込めない場所も残しています。

次に、ボタン園を移設したあとの広場は、二次林を「長居の里山」として維持していくための拠点となる「里山ひろば」として整備しました。

大阪市内にできる初めての里山づくり。
今後は、どんな里山にしていくのか検討する会議を立ち上げ、都会にある貴重な自然を保全し活用しながら、ふるさとの森づくりを行うよう計画しています。

大池・小池

大池・小池にまいた

~水質浄化と水辺の散歩道の設置~

長居植物園のほぼ中央には、植物園の面積の約20%を占める大池があります。その北側には、渓流を介しラクウショウやハンカチノキなどの木々に囲まれた小池があります。

長居公園を利用されるみなさまの中にも、これらの存在をご存じでない方が少なからずおられますが、鳥たちが集まり、大阪市内にありながら、カワセミなどの珍しい野鳥も見ることができる貴重な水景となっています。

しかし、長年の蓄積により大池の水はヘドロが溜まり、水質は悪化、夏の風物詩であったハスも全滅してしまいました。

  • 大池・小池

「植物園の中心にある池の水をきれいにして、水景を楽しんでもらいたい。」

そこで、池の中に棲む生物たちに影響を与えないよう、食品由来のバクテリアをつかって、ゆっくりと水質を浄化していくことにしました。年月をかけて透明度を上げ、美しい水景をつくっていきます。

また、植物園の北側には無料で通れる「水辺の散歩道」を設けて、アジサイ園や大池の景観を楽しめるようにしました。植物園のPR小径です。

都会の中にぽっかりと広がる美しい水景が長居植物園の名所のひとつとして認知されるよう、美観の保全に努めていきます。

展望島

展望島にまいた

~シダレザクラの移植~

大池に突き出た展望島の周りには、ソメイヨシノが植えられ、中央には花壇がありました。
正門を入ってラクウショウ並木を抜け、大池の前に立ったとき、とても目立つ場所に展望島はあります。

「展望島にシンボルとなる桜を植えて、新しい植物園の成長とともに大きくしていきたい。」

芝生広場で窮屈そうに植わっていたシダレザクラの中から1本を選び、展望島に移植することにしました。

移植するシダレザクラは、適期に根まわしして移植時期を待ち、丁寧に運搬して定植、植え桝の土はやはり粘土質であったため、盛土して十分に根を張り大きくなれるようにしました。

シダレザクラの成長とともに、棚を作るなどの手入れを行いながら、植物園100周年に向け、このシダレザクラが大きく成長していくことを期待しています。

ライフガーデン

ライフガーデンにまいた

~面積をさらに大きくして見ごたえある花畑に~

ライフガーデンは、春はネモフィラやハナナ、夏はヒマワリ、秋はコスモスが楽しめる花畑で、写真映えするスポットとして人気を集めているエリアです。

毎年少しずつ植え付ける面積を増やしてきました。

  • ライフガーデン

「もっと圧倒的な花畑にしたい。」

ライフガーデンに隣接していた花壇を別の場所に移設、花畑の面積を増やしました。また、迫力が増すよう園路の際まで花を植えるようにしました。

花期が長く見ごたえのある花畑になるよう、今後は新しい品種の導入も検討しつつ、花にからめたイベントにも力を入れていきます。

アジサイ園

アジサイ園にまいた

~小道を改修して車椅子も通りやすく~

アジサイ園は長居植物園の中では唯一起伏のあるエリアで、市内最大級の1万株とあわせて、多くの方にお楽しみいただいている人気のエリアです。
しかし、排水が悪い箇所があり、梅雨時に楽しめる園としては問題がありました。

  • アジサイ園

「もっと見やすく、秋にも魅力あるアジサイ園にしたい。」

雨の後、水浸しになる小道を付け替え、車椅子でも通れる幅と勾配を確保しました。
秋の紅葉やアジサイの時期の新緑を楽しめるイロハモミジを増やしました。

今後もさらに通行しやすい園路への改修、モミジ類の増植を行っていきます。